『シークレット・オブ・モンスター』49点
【物語】★★☆☆☆
【映像】★★★☆☆
【演技】★★★☆☆
《総合評価》49点
あれ? そうなの?
と、悪い意味で予想を裏切られた映画。
予告編を見て少し期待していたのだが、
見事に裏切られた。
予告編では「この謎が解けるか」とか「衝撃云々」と言われている。
だがしかし。
衝撃云々はともかく、謎は、一切ない(と思う)。
ただのサイコパス少年の乱行を、ただただ目撃する映画。
いまいち、楽しみ方がわからない。
ストーリーは、第一次世界大戦後のフランスが舞台。
アメリカのエリート外交官と、ドイツ系秀才母の間に生まれた少年が主人公。
不安定な欧州の雰囲気は、映画でいい味出している。
日本人にはよくわからないが、あの頃、英米が欧州を政治的に作り直していたんだなあ、と感慨深く見た。
で、そんなややこしい世界観の元で働く両親に、やや放任気味で育てられた少年が、発育の過程で異常な行動を示すようになる。
天才の一面と、粗暴で異常な一面を見せ始めるのだ。
ここから「どうやって独裁者に至るのだろう」と言うところが見せ所だと思うのだが、そこがいまいちつまらない。
単なる情緒不安定の引きこもりみたいで、見ていて苦痛である。
「なるほど、これが独裁者になるきっかけか」みたいなものが、見当たらない。
で、ラスト5分くらいで急に独裁者になってる。
なんじゃそりゃw
前衛映画なのかこれは。
もう少しストーリーで楽しませてほしい。
未来の独裁者ものなら、例えばヒトラーのクローンを扱った『ブラジルから来た少年』を見習ってほしい。
本作では、クローンのヒトラー少年が登場するが、彼はとても心優しく、正義感溢れる少年として登場する。それを見て観客は「ああ、やはり環境が人を悪に染めるのであって、生まれつき悪の人間はいないんだ」と安堵する。しかしラストで、少年は主人公を助けるために、悪人に犬をけしかける。その時の少年が見せた愉悦に浸った表情を見て、映画の観客は愕然とするわけだ。「あ、この子はやばいかもしれない!」と。
そうしたストーリーを期待したのは、期待しすぎと言うものだろうか。
映像は、綺麗だった。
第一次大戦終了後と言う特殊な状況を、美しくカメラが捉えている。
ただ、そんな映像も、情緒不安定の引きこもりの話に使われると、いまいち生きてこない。
また、不用意に長いカットがあるのも気になった。じっくりと長回しで見せるのも演出のテクニックだが、断言しよう、この監督とカメラマンは、その力量がない。ただ無駄に長ったるいカットにすぎない。
演技は、主人公の子役は頑張っていたと思う。不気味だし、狂気を孕んでいる。
でも、「衝撃」と言うほどではないなあ。
あと、大人たちも、いまいち。
家政婦のおばさんはちょっとよかった。
久々のミニシアター系映画だったので、少し色々じっくりと考えて、楽しもうと思ったのだけど、残念な作品であった。