『シン・ゴジラ』87点
【物語】★★★★☆
【演技】★★★☆☆
【映像】★★★★☆
《総合評価》85点
ブログ主はゴジラ映画が大好きである。
平成ゴジラも含め、ハリウッド版(マグロをたべるやつを含む)も、ほぼすべて観た。
伊福部昭のサントラも買った。
それくらい好きなのであるが、『メカゴジラの逆襲』以降、つまり、平成ゴジラシリーズ、ハリウッド版ゴジラ2作は、とても面白かったかといえば、やや微妙なものもあった。昨年公開されたギャレット・エドワース版『ゴジラ』はかなり良い方だったが、他は、「フアンだから楽しめる」「でも、ちょっと苦笑い」的な作品が多かった。
本作も、観る前は期待よりも不安の方が大きかった。
『進撃の巨人』や『テラフォーマー』になってるのではないだろうか。
『スペースバトルシップ ヤマト』や『デビルマン』を超えてしまうのではないか。
そんな不安もありながら、「いや、庵野だから大丈夫」と自分を鼓舞し、「いや、出渕の実写もひどいから庵野も心配だ」、といった日々を過ごした。
いずれにせよ、公開したら劇場鑑賞することは決めていた。
ブログ主は、ゴジラとロメロとジョン・カーペンターは、どんなに前評判が悪かろうが観に行くと決めているのだ。どんなに駄作でも、死ぬまでささやかなパトロンとして応援し続ける覚悟である。
で、事前情報もほとんどなしに観にいったわけだが、
一言で言うと、すっっっっっっっごく面白かった。
ああ、よかった。
贔屓目なく、ゴジラワールドに没頭できた。
ただし断っておくと、小学生の子供や、アクション映画には興味があるけど怪獣映画には興味がない女性などにとっては、やや評価が低いかもしれない。
幼少期に特撮映画やロボット映画が好きで、大人になった少年が狂喜乱舞できる作品。
「これが日本映画の限界だよね」とか「予算も少ないしハリウッドには勝てないよね」とか、そういう言い訳が頭をよぎらずに楽しめる映画。
それが、本作である。
ネタバレになるから物語についてはそれほど触れないが、基本的に初代ゴジラの話をなぞっている。つまり、シンプルだ。
初代ゴジラの公開はブログ主が生まれる前のことだから、リアルタイムでは鑑賞していない。ただ、リバイバル上映があったので、劇場に観にいった。
そのとき「おそらく当時、この映画は怖い映画だったんだろうなあ」ということだ。ただし、高校生の私が20年以上前に作られた白黒映画を見て、実際にはそれほど怖いとは思わなかった。
だが『シン・ゴジラ』は、怖かった。東京の街を、巨大な暴力が襲う。
初代ゴジラをリアルタイムで観た人も、こんな怖さを感じたんだろう、と思った。
物語は単純だが、登場人物やそのセリフ、字幕は、ものすごい量になっている。
子供にはおそらく、咀嚼しきれないくらいだ。
しかし、そこはさすが庵野氏の脚本、心地よいスピード感でサクサク進む。
よく考えてみればゴジラが出てくるアクションシーンは1時間以下なのだが、残りの1時間、一切ダレることがない。これは、脚本と編集の勝利だろう。
演技も、竹内豊はじめ、みんな頑張ってる。
「こいつの演技はすごい」というものはないが、庵野脚本をきちんと演じきっている。
そのため、みんなかっこいい。
ただし石原さとみをのぞく(笑)。
映像は、よかった。
ハリウッドのバリバリCG映画と比較すれば、確かに、幾分見劣りする。
だが、映像に味があるのだ
なぜなら、特撮映画だから。
トランスフォーマーのCGなど、どんなにすごいことが起こってももはや何の感慨もないが、シン・ゴジラの映像は、いいのだ。
何がいいのか、というのを口で言い表すのは難しいが、庵野という作家が、魂を削って、作品に命を吹き込んでいるのがよくわかる。それが、堪能できるのだ。
また、それを実写映画としてまとめている樋口監督も、褒めるべきであろう。
やや「戦隊アクション映画」っぽい、、つまり子供っぽい場面もあるのだが、総じて、大変クオリティの高い怪獣映画を撮っている。
ちなみに、ゴジラにはとんでもない必殺技が用意されている。
予想の範囲を超える、しかし、「う〜む、そうきたか」と半ば納得する必殺技だ。
これについても賛否両論があると思うが、ブログ主は「アリ」だと思う。
なにより、インパクトが凄まじかった。
冒険するときは、中途半端より、思い切ってやり切る方がいい。
この映画が海外で評価されるかどうかは知らない。
だが、もうそんなことはどうでもいいのではないか。
そんなことはありえないだろう、と思っていた映画である。
最後に少しだけ、減点についても触れておこう。
先にも述べたように、子供や女性を置いてきぼりにしたところはあるので、
万人にうけない、ということで減点した。
ただ、一個人としては、この割り切りは大変ありがたいことである。
またゴジラの倒し方で、やや滑稽に見えるようなところがあった。
これは、ブログ主の心の中でも賛否両論なのだが、あえて「減」とした。
最後に、やはり石原さとみである。
『進撃の巨人』のときにも思ったが、調子のってるな〜(笑)
本人はノリノリなのだが、観ていて、ちょっと引く。
キャスティングにあたり、大人の事情もあったのだろう。
スポンサーの事情もあったのかもしれない。
しかし、さすが庵野である。
あれだけ目立つ役割を与えながら、おいしいところは全部市川実日子に持って行かせてる(ブログ主の感想です)
石原さとみがバンバン登場するのに、むしろ市川実日子が地味〜に男心を奪っていくのだ。
この手法はきっと、アスカを目立たせながら、実は綾波やミサトさんで得点を荒稼ぎしたエヴァのの手法と同じなのだろう。