『狐狼の血』は見応えがある正統派ヤクザ映画 74点
【物語】★★★☆☆
【演技】★★★★☆
【映像】★★★☆☆
〈総合評価〉74点
予告編が迫力があったので気になっていた。
でも最近の映画は「予告編のシーンが見どころのすべて」というパターンも多い。
という事で劇場で見過ごしてレンタル鑑賞になったのだが、
この出来なら映画館で見ても満足だったと思う。
約2時間、ダレる事なく、ヒリヒリするようなバイオレンスを堪能できた。
物語の軸は、警察とヤクザのバチバチのやりとり。
ベテラン刑事(役所広司)と新米の国立大卒刑事(松坂桃李)のバディが主役。
ヤクザとズブズブの関係になって(つまり悪徳警官として)、マル暴のエースとして君臨する役所と、彼のやり方と自分なりの正義感との間で葛藤する松坂が、ある事件を追い掛けるという筋書き。
原作の小説は直木賞や吉川英治文学賞の候補になり、日本推理作家賞を受賞している。未読なので比較はできないが、さすがというか、安定した話の運びで、無理や破綻が見られない。
あっと驚く展開があるわけではないが、冗長なシーンがほとんどなく、2時間常にヒリついた感覚を維持させられる。テンションとスピード感がほど良い、いい脚本だと思う。
演技は、主役二人を筆頭に全体的にいい感じ。
役所広司は見る前から「これくらいはやってくれる」という期待を裏切らず、松坂桃李は、正直それほど期待していなかったけれど、凄みを帯びた演技は良い意味で期待を裏切ってくれた。江口洋介は、最近は『ガイアの夜明け』の温和な姿しか知らないが、なかなかどうして、こわいヤクザを見事に演じている。
そのほかのバイプレイヤーも適材適所で、演技がいいのもそうだが、配役の妙とも言える。
意外に、ブログ主の好きな石橋蓮司がイマイチな感じだったが、これは彼の責任とは言えない。悪役として登場し、最後悲惨な末路を辿る既視感がありすぎるし、今回もその通りだったから。ここだけは配役がマイナス点。
映像的には「古い時代」を「古臭くない」感じで撮影できている。
舞台は30年ほど前の広島だが、その違和感はなかった。
この辺り、衣装や小道具でも細かい気配りがなされているのだろう。
ブログ主は『アウトレイジ』シリーズも好きだし、『GONIN』も見たが、前者が回を重ねるごとに「たけし映画」の趣が強くなり、後者は「美学」が強調されすぎ、少しヤクザ映画に限界を感じていたのだが、『狐狼の血』は、そんな停滞感を吹き飛ばし、「まだまだ面白いヤクザ映画作れるじゃん」と感じた。
まあでも、ヤクザ映画だから観る人は男性に限られるので、やはり市場は小さいか。
と思っていたら、原作はヤクザ映画が大好きな女性だった。
わからないものだ。