『クワイエット・プレイス』はそれなりに頑張ってるけど62点
【物語】★★★☆☆
【演技】★★★☆☆
【映像】★★★☆☆
「音を立てたら即死」という宣伝が印象的な本作。
同じような映画は『ドントブリーズ」の記憶が新しいが、あちらの設定は一軒家とオッサン、こっちの設定はエイリアンに征服された後の世界ということで、スケールが全く違う。
エイリアンものでこのシチュエーションはなかった(と思う)ので、興味津々で観に行った。
物語は冒頭から緊迫感に包まれる。
廃墟の中を、靴を脱いで音を立てないように歩き、物資を探し求める一家。
不用意にモノを落としかけ、ギリギリのところで拾い、こと無きを得る。
説明がなされないまま「音を立てるとやばい」ことを観る者に知らしめる、絶妙な展開だ。
そして直後に、些細な気の緩みと、優しさが原因で、一家に悲劇が訪れる。
ここまでは非常に良かった。
劇場が本当に静まり返ったまま、時間だけが経過していく。
なかなか新鮮な経験で「新体感」というコピーもあながち嘘ではない。
ところがである。
その後は結構ザクザクと音を立てて生活しているのだ。
少なくともブログ主には、そう見えた。
会話はしないし、隠れ家にも防音対策をしているとは言え、普通に森の中を歩いていたりする。どこまでがセーフで、どこからがアウトか、このあたりから微妙になる。
ひょっとしたら自然界の「音」はOKだけど人間の「声」はアウトなのではないかと途中で仮説を立ててみたが、「滝の前では喋っても平気」ということがわかり、この説も当てはまらなくなる。
こうなると「音を立てれば即死」という本作の生命線とも言える設定は、単にストーリー上盛り上がる時には「アウト」、それ以外は「セーフ」という、恣意的な設定なのではという疑念が湧いてくる。
主演のエミリー・ブラントは美しい。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル」でもエイリアン退治をしていたが、前回のような超人的兵士ではなく、今回は妊婦さんとしてエイリアンを撃退する。
そう、彼女は妊婦さん。
この映画のあらすじを知った時に、主役を妊婦にしたことには唸らされたモノだ。
「音を立ててはいけない状況で出産するなんて、どうなるんだ?」
そんな無理ゲーをどう克服するのか、映画を観ずにはおれないではないか。
まあ、どうなるかは映画を観て欲しい。
ただ一つ、大きく動揺したことを報告しておく。
ブログ主は鑑賞前、てっきりエミリーが妊娠時にエイリアンの襲撃に遭い「音を出してはいけない世界になった」と思っていた。それで妊婦に同情していた。
でも違った。
襲撃後「音を出してはいけない世界」になってしばらくしてから妊娠していたのだ。
「音を出したら即死」の世界でセックスする?
それが生物としての「種の保存」の本能であるとか、そういう理屈もつけられるかもしれないけど、無責任な子作りじゃない? 赤ん坊は泣くものであり、それを知っていれば、おいそれとは子作りはできないのではないか。
一応、一家は出産に備えて色々対策を講じているが、とてもじゃないが安心には程遠い代物。これを知ってからエミリーとその旦那を、心情的にはあまり応援できなくなった。
新しいシチュエーションにトライしたことは評価したい。
また、映像や編集、演技も卒なく、特にマイナス要因は見当たらない。
でもやはり、そもそも無理がある企画だったのかなあという印象は拭えない。
そもそも無理がある、という点に目をつむれば、脚本や演出もなかなか良かった。
詳しくは述べないが、「階段」のシークエンスは、観ていてハラハラした。
ヒッチコックばりのドキドキがそこにあった。
そういうところも加味して、当初は60点をつけようと思ったが65点に加点した。
しかし急転直下、3点減点して62点に。
というのも、もう一人の主役と言える子役の女の子が可愛いくないのだ(ゴメン)
ダコタ・ファニングとは言わないが、もう少し可愛い子はいなかったのか。
あのキャスティングは疑問である。