『マッドマックス 怒りのデス・ロード』90点
『マッドマックス 怒りのデスロード』
【物語】★★★☆☆
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★★
《合計評価》90点
本日のアカデミー賞発表で最多の6冠に輝いた。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6192941
だから「さすが」とか「納得」と言うつもりはない。
アカデミー賞をとろうがとるまいが、私にとって近年の最高傑作の一つなのだから。
『マッドマックス2』は、私の映画の原体験でもある。
まだ小学生だった頃、父親に「車がブンブン走る映画」と誘われ一緒に観に行った。
実は私、てっきり『キャノンボール』という映画を見に行くものだと勘違いしていた。バート・レイノルズやジャッキー・チェンが楽しくレースを繰り広げる映画だ。
てっきりそう思っていたら、いきなり荒野でヒューマンガスですわ。
車に人をくくりつけてぶつかるわ、頭にブーメラン刺さるわ、ボーガンで人殺すわ、
超絶ビビリながらスクリーンに釘付けにされた。
それ以降「これは『マッドマックス2』を超える!」と思えるアクション映画には、
ほとんど出会っていない。
それくらい、私にとっては特別なのだ。
さて本作。
いろいろなレビューに書かれているとおりが、その通りだと思う。
まず、さしてストーリーはない。
極楽とんぼの加藤曰く「行った道を帰ってくる。それだけ」
これ本当。
そしてこの映画のすごいところは、たったそれだけの話にもかかわらず、
2時間を超絶楽しませてくれることだ。
崇高なミッションや、奥深い人間関係や、社会的メッセージは、ない。
いや、いらないのか。
ジョージ・ミラー監督に言わせれば、
映画のキモとなるそれら要素さえ、不純物なのかもしれない。
エンターテインメント100%原液があるとしたら、この映画なのだろう。
そして演技。
主役はのトム・ハーディは、実に微妙なさじ加減の演技をしている。
存在感があるようで、ないような(笑)
いや、主演のマックスなのであるから、めちゃめちゃ目立っているはずなのだ。
はずなのだが、荒野の一匹狼というには、やや凡庸な顔なのだ。
少なくとも、若かりしメルギブソンの、触れば血が出るようなギラギラ感はない。
しかも、シャリーズ・セロンの圧倒的存在感に、正直、食われている。
普通、こうなったら映画としは失敗するものなのだが・・・そうではないのだ。
結構いいバランスに仕上がっている。
監督の演出がそうさせるのか、トムの絶妙なルックスと立ち回りがそうさせるのか、
不思議である。
最後に映像。
これも言われ尽くされているが、CG全盛期の現代において、スタントメインの映像は、アナログの底力を再確認させてくれる。
最近のCGバリバリ映画、正直私は食傷気味だ。
だって、「なんでもできる」とわかっているのだから。
プレステのゲームのオープニングと、そんなに大差がない。
それに比べ『マッドマックス』の映像は、衝撃である。
「これだよ、これこそ映画だよ」
そう思わずにはいられない。
実際の人間がアクションし、それをフイルムに収める。
これが今、いかに贅沢か。
過去の作品のリメイクは、いまいちに終わることが多い。
『遊星からの物体X』や『トータルリコール』は、
そこそこ楽しめたが、あくまで「そこそこ」だった。
『マッドマックス 怒りのデスロード』は違った。
前作を超える、とは言わないが、
期待を上回る、大納得の出来栄えで戻ってきてくれた。