ゼロ号試写室

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『オデッセイ』89点

www.foxmovies-jp.com

【物語】★★★★☆

【演技】★★★☆☆

【映像】★★★★★

《合計評価》89点

 

横綱相撲、とはこのことだろう。

世界最高峰の監督の一人、リドリー・スコットが、

すばらしい脚本に恵まれたなら、

至福の120分感が生まれる。

まさにこの映画がそうだ。

盤石の取り組みで、文句のつけようがない。

 

ストーリー展開は、ロン・ハワード監督の『アポロ13』と同じだ。

宇宙に取り残されたクルーが、知恵と科学と行動で、地球への帰還を目指す。

殺風景な火星を舞台に、一人悪戦苦闘するマット・デイモンを映すのだが、

知的冒険が小気味よく繰り広げられ、まったく飽きない。

主人公と一緒に、喜び、落胆し、ドキドキし、

火星脱出ゲームを楽しむことができる。

また、NASAを始め、地球や、ヘルメス(宇宙母艦)の仲間たちの活躍も頼もしい。

ショーン・ビーンが渋い役柄を演じている)

 

映像美は、さすがリドリー・スコットと言うべき。

前作『プロメテウス』は映像美しかなかった残念な作品だったが、

今作は、脚本がよく、作品完成度が高い。

SF映画として、パーフェクトと言っていいだろう。

 

こういう映画を見ると、日本はSF映画に関して、歯が立たないと言わざるを得ない。

映像や予算の問題以前に、脚本(原作)の問題。

科学的博識を兼ね備えた作家が日本にいるかといえば、

小松左京以降、やや、小粒と言わざるを得ない。

これは、映画の問題というより、作家の問題か。

 

さて本作に、あえてケチをつけるとしたら、

あまりにも見事な決まり手で横綱が勝ってしまったことだろう。

鬼気迫る何か、あるいは心のひだにひっかる何かは、この映画には特にない。

スパン!と一瞬で完勝だ。

相撲でも、こうした取り組みは、えてして名勝負とはならず

記憶に残る取り組みにはならない。

 

そんなことでケチをつけるのは我ながら意地悪だが、

たとえば『2001年宇宙の旅』や、

同じリドリー・スコッとの『ブレードランナー』や、

最近の宇宙ものなら『月に囚われた男』などは、

鑑賞した後々まで、見たものを、その世界に呼び戻す、

何かを持っている。

それが『オデッセイ』にあったかというと、ないかもしれない。

 

ただ、それは「あえてケチをつけるなら」レベルの話。

誰にでもお勧めできる、すばらしい映画であることは間違いない。