『砂の器
【物語】★★★★★
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★☆
《総合評価》94点
名作と言われていることは知っているし、テレビドラマ化されるなどして、およそのあらすじも知っている。でも見たことがないので、生まれて初めて見た。
噂に違わぬ傑作だった。
ただ、中年になってから見たのは正解だと思う。
20代の頃に見たら、これほどは感動しなかったのではないか。
あらすじはもはや言うまでもない。
「ああ、これがドラマチックと言うのだな」と、その一言だ。
とすると、最近の「ドラマ」の、なんとドラマになっていないことよ。
あと丹波哲郎、加藤剛、森田健作の演技、また渥美清他のバイプレイヤーの存在は絶品。(この辺りは、若い方にはあまり効き目がないかもしれないが)
大スターのオーラというのは、フイルムでしか出せないだろうか。
映像は、大変味わい深い。
パンなどをすると画面が揺れるなど、今では考えられないようなこともあるが、
フイルムならではの味わいが、なんとも言えない。
戦前、戦後の日本の姿を見ているだけでもうっとりする。
私が生まれる前の映画だが、幼少期の頃の記憶にある日本の姿と少しリンクしているところもあり、戦前、戦後、高度経済成長とダイナミックに変わり続ける日本を、感覚的に堪能できた。
ええ、泣きました(笑)
感動する映画と言われているもので、本当に泣けるものは少ないのだが、これは泣いた。
ただね、ある程度としを食って、人生の酸いも甘いも味わってからの方が、この映画は染みると思う。
ああ、見てよかった。
『ソウルステーション:パンデミック』は『新感染』と同様に面白い。76点。
【物語】★★★☆☆
【演技】ーーーーー
【映像】★★★☆☆
《総合評価》76点
思わぬ拾い物だった『新感染』の前日譚アニメ。
監督も同じ(アニメが本業)。
前回は「期待していなかったが」、今回は「期待を裏切らなかった」。
つまり、面白かったと言うこと。
あくまで、ゾンビ好きの人に限る、と言うことだが。
この監督の映画のいいところは、変な斬新さを狙わず、丁寧なストーリーテリングを心がけることだろう。
本作も、ストーリーはシンプルながら、テンポよく、過不足なく、興味深く話しが進んでいく。話の背骨が非常にしっかりしていて、心地よい。
案外、これが難しい。
強引な筋書き、映像や演技による誤魔化しで、「物語が雑だなあ」と感じる映画は、日本でもハリウッドでも多い。
目新しい要素はないが、客が堪能できる料理をきっちりと出してくれる。これ、非常に大事。満足感が違う。
個人的には、ゾンビとしての新情報は得られなかったが、韓国の事情が色々分かったことは副産物として収穫だった。
経済格差(駅のホームレス)、根強い男尊女卑もそうだが、「お国のため」と言う考えが彼の国にはあるのだと言うことを改めて思い起こした。韓国だけでなく、やはり、徴兵制がある国は、「国に仕えた」と言う意識を持つのだ。日本で今、「俺は国のために尽くした」と言える人は、本当に少数派だろう。
アニメーションの技術であるが、これが高いか低いかは、ブログ主にジャッジすることはできない。一見アメコミ調っぽく、ペラっとした感じであるが、個人的にはまったく気にならない、普通に楽しめる映像だった。
ジブリや新海誠映画と比べると、そりゃあ「画」は違うかもしれない。
でも、もともと「画」を堪能する映画ではないと思うしね。
どちらかと言うと大友克洋系の映像かもしれない。
補足(ネタバレ含む)
物語に新規性、斬新性がないような書き方をしたが、クライマックス直前、あっと驚く展開が一つ隠されている。この辺りは脚本の勝利で、小気味好い。
『エイリアン コヴェナント』は駄作もいいところ、甘くて30点がいいところ
【物語】★☆☆☆☆
【演技】★☆☆☆☆
【映像】★★★☆☆
《総合評価》30点
リドリー・スコット監督が巨匠であることは論を待たない。
だが、私は『コヴェナント』を駄作と言い切ることに、何ら迷いはない。
40年も前にSFの金字塔「エイリアン」を生み出した監督は、
本当に、もう二度とエイリアンに近づかないでほしい。
歴代エイリアン映画の中で、最低だ。
ちなみに私の言う「エイリアン映画」には「APV」も含まれる。
つまり、エイリアン1、2、3、4、プロメテウス、APV、APV2より酷いのだ。
そんなはずはない、と思うかもしれない。
私も3時間前まではそう思っていた。
以下、ガンガンネタバレを含みながら、感想を述べる。
まずストーリーが、全くもってひどい。
突き詰めると、本作が駄作の理由はここに集約される。
私の中の分類では、1はホラー映画である。
宇宙を舞台にした本格ホラーとしては、史上初の、そして今でもその輝きを失わない大傑作だ。
2と4はホラーテイストのアクション映画である。
2は言わずと知れた「第2作が第1作を上回ったかも知れない稀有な例」。
4も、賛否両論はあったかも知れないが、アクション映画として楽しめた。
3とプロメテウスは、アクションより、メッセージ性を重視した作品だ。
正直、3は陰気臭い。
宗教臭い、と言うべきか。
1→2と過激性を強めてきた経緯から考えると、もっと炸裂した映画を期待してしまったが、どちらかと言うとリプリーの精神性を堪能する映画になった。
私はあまり好きではなかったが、「これが落としどころか」と一定の理解はした。
そしてプロメテウス。
これはエイリアン映画、と言うより、エイリアンの前日譚と言うことで、割り切って見た。アクションやホラーとしてはいまいちだが、何かの深いメッセージ、と言うと聞こえはいいが、年寄り監督特有の、小難しいメッセージを発しようとしていた。それが成功しているかどうかは微妙だが、まあ、「ああ、そう言うことがしたかったのね」と理解はできた。そもそもタイトルにエイリアンという文字が入っていないので、同じような期待をするのも酷だ。
(AVPについてはは、ここでは置いておく。)
さて、コヴェナントであるが、これはどんなカテゴリーに入るのか。
実はそこが最大の問題点。
少なくとも、ホラー映画、アクション映画としては、レベルがお粗末だ。
容易に先が読める展開、コテコテの展開のオンパレード。
これをホラー映画、アクション映画として評価するなら、学芸会レベル。
ちょっと映画を聞きかじった素人が、つぎはぎして書いたような代物。
では何かメッセージがあるのかというと、それも汲み取れない。
何か言いたげだったが、説明不足で、全く伝わらない。
ただただ、出来の悪い筋書きの、消化不良の、キレの悪いションベンみたいな映画。
よくこんな脚本に資金を投じようと思ったものだ。
その証拠に、キャラクター、役者が、どれも魅力的でない。
印象にも残らない。
マイケル・ファスベンダーのための映画、と一部で言われているようだが、
そのファスベンダーの役どころだって、正直陳腐なものだった。
このパターンは、見飽きてると言っても過言ではない。
他のクルーは、言わずもがな、テンプレの「死に役」しかいない。
何がしたかったのか?
リドリー・スコット監督は、何かを言いたかったのかも知れないが、自分が言いたいことに没頭したあまり、登場人物を放ったらかしにしたようだ。
あるいは、完全にボケて、周囲が何も言えないだけかも知れない。
映像は、「さすがリドリー・スコット」と言いたいところだが、
最近は彼に負けないSF映画もあるので、正直「及第点」以上の何者でもない。
エイリアンが公開された同年、マッドマックスも公開された。
こちらは約40年の雌伏の時を経て、昨年「デスロード」として完全進化を遂げた。
ジョージ・ミラーに負けず、リドリーの「エイリアン」も完全進化を遂げるかと期待したが、本当に期待はずれに終わった。
無念である。
『新感染』83点 予想外にいいゾンビ映画!
【物語】★★★★★
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★☆
総合評価87点
ゾンビ映画好きとしては、「え? 韓国のゾンビ映画?」と最初は眉唾だったが、
海外でも評価が高いらしく、予告をやあらすじを見ても面白そうだったので、
あまり深く考えずに見ることにした。
川崎の映画館で最終上映の回、がら空きだろうという予想に反して9割席が埋まっていた。そういえば今日は1日、映画の日。
半額で見るなら、外してもいいか。
そんな気持ちで見始めたのだが、ごめんなさい、なめてました。
面白かったです。
厳密にいうとゾンビ映画ではない。「28日後」や「アイアムヒーロー」と同じ、人が感染し、凶暴化する類のパニック映画。
娘を離婚した母親に合わせるため、ソウルから釜山に向かう超特急に娘と父親が乗るところから物語が始まる。日本で言う所の新幹線。タイトル「新感染」のセンスのなさが残念だが、原タイトルは「釜山へ」。こっちの方がかっこいい。
そして、この超特急というシチュエーションが素晴らしい。
古くは「オリエント急行殺人事件」、最近だと「スノーピアサー」など、電車を面白く使った映画は、本当にハラハラするし、面白い。本作もその例外ではない。
高速で走る列車内は、ある意味で安全地帯であり、ある意味で閉ざされた密室である。その使い方が巧みで、冒頭からラストまで緊張感が途切れることがない。
そして、ストーリーが明快だ。
設定こそ斬新だが、あまり余計な寄り道をせず、リニアに最後までズバッとエンタメを貫く姿勢は評価したい。途中でダレることもなく、素直にその状況を楽しめる、否、怖がれる。
役者もなかなかいい。
残念ながら誰一人知らないのだが、それぞれいい味出してる。
特におっさんたち。
これは、役者もさることながら、脚本がいいんだろう。全員の立ち位置というか、キャラ設定が明快で、途中で「なんでそんなことするんだ?」と首をひねることが少ない。
この手の映画には、主人公を危機に晒すために、足を引っ張ったり、反社会的判断をするキャラが不可欠なのだが、そこを上手くやらないとストレスが溜まる。この映画では、あまりストレスがたまらなかった。
映像も迫力がある。
相当お金と人員を動員したのではないか、列車や駅をうまく使い、スケールの大きな絵になっている。ハリウッドにも負けていない。
観る前は、「韓国映画ってグロいだけかも?」という偏見もあったのだが、そのあたり、絶妙に「汚くない」仕上がりになっている。血は出るし、怖いんだが、汚くない。「アイアムアヒーロー」の方がむしろ汚かったなあ・・・
ゾンビ映画を真面目に、かつ、創意工夫を凝らして作った良作である。
見てよかった。
『ハクソー・リッジ』50点
【物語】★★★☆☆
【演出】★★☆☆☆
【演技】★★★☆☆
総合評価:50点
う〜ん、これでアカデミー作品賞ノミネートかあ。
正直納得いかない。
話がつまらないわけではない。
宗教上の理由により人を殺めることができないアメリカ兵が、
衛生兵として死地に赴き、仲間を助ける。
舞台は沖縄戦だから、日本はボコボコにされるわけだが、
それを差し引いても、まあ、そこそこ楽しめる映画。
一部には「舞台が沖縄であることをなぜもっと宣伝しなかったのか」みたいな批評もあるが、それは的外れというもの。
だって、製作陣にとっては、沖縄だろうがラバウルだろうが、どうでもいい。
たまたま史実で沖縄だっただけで、それほど思い入れはないのだ。
話は、まあ、いい。
演出、特にハクソー・リッジの戦いの演出が、イマイチだった。
まず、これはあまり期待していなかったからダメージも少ないが、
日本兵の描き方が雑。
ゾンビか、テラフォーマーか、チンピラにしか見えない。
当時の米兵から見たら、日本兵がそんな風に見えていたのかもしれないが、
『硫黄島からの手紙』とかは、もう少し丁寧に描いていたし、
やれないわけじゃないと思う。
あと主人公も、手榴弾をカンフーキックで打ち返すし・・・
とてもじゃないが「『プライベートライアン』に匹敵する戦闘シーン」なんて、
あんな宣伝文句は使うべきではない。
役者は頑張ってたと思う。
ただ後半、誰が死んで、誰が生き残って、誰が負傷してるのか、よくわからなくなる。
まあ、戦場というものは、そういうカオスなのだろうけどさ。
『フューリー』もそうだったけど、『プライベートライアンを越える』と宣伝文句で謳って、超えたものはない。というか、自信がないから、そういう宣伝文句を使うのか。
やはりスピルバーグは天才なんだな。
『バイオハザード ザ・ファイナル』36点
【物語】★★☆☆☆
【演技】★★☆☆☆
【映像】★★☆☆☆
総合評価:36点
まあ、所詮は「バイオハザード」なので大して期待せずに、
ハードルを下げて鑑賞したのだが、そのハードルをさらに下回っていた。
「観なくてもいい映画」の誕生である。
あらすじは、あるようで無きに等しいのがこのシリーズのお約束。
アリスとアンブレラ社+ゾンビがバトる。
それ以外は全て、つじつま合わせである。
「最後を見届けよ」という本作のキャッチコピーであるが、
その最後も、全然、本当に対したことがない。
最後かどうかも怪しい。
いいのよ、このシリーズに物語は(笑)
そんなものは1作目からなかったんだから。
このシリーズの生命線は、ホラーテイストのアクションとCG。それが全て。
前作までもそうだったし、それが許されるシリーズだった。
だがしかし。
本作ではそのアクションとCGも、なんだか期待はずれ。
目新しい見所はないし、過去の焼き直し的な映像のオンパレード。
そして決定的な問題が「暗いシーン」の多さ。
何か戦闘をしているようなのだが、暗くてわからない。
『AVP2』と同じくらい、暗くて、よくわからないシーンが多い。
これは絶対にライティングミス。
もしくは、低予算だからあえて照明を落として、
セットのチープさをごまかしているか。
おそらく、スポンサーがそれほどつかなかったのだろう。
だから「バイオハザードシリーズの金看板はついているが、しょぼい。
それでもなんとか稼がなければいけない。
特に、本家とも言える日本で稼がねば。
どうする?
ということでローラがキャステイングされたのではないかと
ブログ主は妄想する(笑)
いずれにせよ、見るべきところのない映画であった。
その前日に見た『キングオブエジプト』もひどかったが、
こっちはまだ、おっぱいがたくさん見れた(着衣)
『バイオハザード ザ・ファイナル』は、本当に何もない。
「なんとなく見れる」レベルになっているのは、ある意味大したもんだが、
見逃しても全く損はない。
『ローグ・ワン』84点
【物語】★★★★☆
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★☆
《総合評価》84点
正直「微妙かもなあ」と思って観にいったのだが、
個人的には「エピソード7 フォースの覚醒」より面白かった。
もう少し褒めると、歴代SW作品の中でも上位に入る面白さだった。
「そんなバカな」と思われるかもしれないが、そう考える理由は、後で3つ説明する。
まず最初に断っておくと、この作品は下駄を履いている。
言うまでもなく、これまでのSW作品が作り上げた世界観があっての、スピンオフ作品なのだから、その財産の上に成立する映画だ。
だから「物語」にしても「映像」にしても最初から有利なスタートラインに立っている。
でも、うまく作らないと、単なる便乗作品となるだろう。
本作は、そうなっていない。
うまく、財産を生かしつつ、オリジナリティも出し、
単品で優れた娯楽作品になっている。
物語は、SW1作目(エピソード4)の冒頭につながる有名なエピソードが下敷きになっている。
レイア姫が手にし、R2D2に託し、ルーク・スカイウオーカーが手にする「デススター」の設計図。SW1作目で大きな役割を果たしたこの設計図をめぐるストーリーだ。
この設計図を、「ローグ・ワン」と言う愚連隊が入手するために死闘を繰り広げるのだが、デススターの脅威を観客の多く(全員?)が知っているだけに、この展開見ていて盛り上がる。
なお、このローグ・ワンは、正規軍ではなく、いわば、はぐれものの集団。それが、各々の使命感、覚悟から、帝国に挑む様は、ワクワクしてしまう。
映像は、いつものSWクオリティだから見ていて安心である。
白兵戦、宇宙艦隊戦、どれも迫力満点だ。
出番は少ないが、ダース・ベイダーの存在感、無双感もえげつない。
ある意味、「脂の載った」ベイダー卿の強さは、心胆寒からしめる。
演技は、少し甘めにつけて星4つ。
フォレスト・ウィテカーとドニー・イエン以外は割と地味な配役(いや、この2人もそこそこ渋い存在)だが、皆、うまく「無名の戦士」を演じている。
変に浮いた登場人物がいないのは、演出や脚本のおかげであるが、
役者の演技力も、それに貢献しているだろう。
最後に、本作が本家本流の「エピソード7」より優れていると思った理由を3つ述べる。
その1。
SWという財産の使い方がうまかった。
安易に有名キャラクターを登場させたりしなかったのが潔よい。
世界観は使い倒しつつ、ストーリーのオリジナリティを毀損していない。
「エピソード7」は、それが「売り」とは言え、昔の有名人を総登場させ、それでポイントを稼いだ感じがある。
オールドフアンとしては、確かに嬉しいのだが、やや安易さは否めない。
その2。
「その1」と少し関係するが、ストリートして「続編」が想定されていない。
1つの映画作品として「ローグワン」は完結しているのだ。
これは個人的には評価できる。
「エピソード7」は、確かに楽しめる映画だが、「あと2作続くよ」という前提があるので、映画単体として評価しづらいのだ。面白いのかそうでないのかは、あと2作見てみないとなんとも言えない。
その点「ローグワン」は、これ1作で「終わらせている」。
映画としての魅力が成立しているのは、こちらに軍配があがる。
その3。
変に、商品化を狙ったキャラクターがいなかったのが、好ましかった。
これは、必ずしも「だめ」というわけではないが、例えば「エピソード1」のジャージャーフィンクスや、「エピソード7」のBB8は、ある程度商品化を想定したものではないかと勘ぐってしまう。そういうことに気づくと、ブログ主は、萎えるのだ。
その点、「ローグワン」のキャラクターは、総じて「華がない」。
そこが素敵。
色々な人のレビューを見ていると、前半がだるい、などの意見も聞かれる。
思い返してみると「そうかも」と思わないでもないが、
ブログ主はめちゃめちゃ楽しめたので、何がともわれ、一度見て欲しい。