『エイリアン コヴェナント』は駄作もいいところ、甘くて30点がいいところ
【物語】★☆☆☆☆
【演技】★☆☆☆☆
【映像】★★★☆☆
《総合評価》30点
リドリー・スコット監督が巨匠であることは論を待たない。
だが、私は『コヴェナント』を駄作と言い切ることに、何ら迷いはない。
40年も前にSFの金字塔「エイリアン」を生み出した監督は、
本当に、もう二度とエイリアンに近づかないでほしい。
歴代エイリアン映画の中で、最低だ。
ちなみに私の言う「エイリアン映画」には「APV」も含まれる。
つまり、エイリアン1、2、3、4、プロメテウス、APV、APV2より酷いのだ。
そんなはずはない、と思うかもしれない。
私も3時間前まではそう思っていた。
以下、ガンガンネタバレを含みながら、感想を述べる。
まずストーリーが、全くもってひどい。
突き詰めると、本作が駄作の理由はここに集約される。
私の中の分類では、1はホラー映画である。
宇宙を舞台にした本格ホラーとしては、史上初の、そして今でもその輝きを失わない大傑作だ。
2と4はホラーテイストのアクション映画である。
2は言わずと知れた「第2作が第1作を上回ったかも知れない稀有な例」。
4も、賛否両論はあったかも知れないが、アクション映画として楽しめた。
3とプロメテウスは、アクションより、メッセージ性を重視した作品だ。
正直、3は陰気臭い。
宗教臭い、と言うべきか。
1→2と過激性を強めてきた経緯から考えると、もっと炸裂した映画を期待してしまったが、どちらかと言うとリプリーの精神性を堪能する映画になった。
私はあまり好きではなかったが、「これが落としどころか」と一定の理解はした。
そしてプロメテウス。
これはエイリアン映画、と言うより、エイリアンの前日譚と言うことで、割り切って見た。アクションやホラーとしてはいまいちだが、何かの深いメッセージ、と言うと聞こえはいいが、年寄り監督特有の、小難しいメッセージを発しようとしていた。それが成功しているかどうかは微妙だが、まあ、「ああ、そう言うことがしたかったのね」と理解はできた。そもそもタイトルにエイリアンという文字が入っていないので、同じような期待をするのも酷だ。
(AVPについてはは、ここでは置いておく。)
さて、コヴェナントであるが、これはどんなカテゴリーに入るのか。
実はそこが最大の問題点。
少なくとも、ホラー映画、アクション映画としては、レベルがお粗末だ。
容易に先が読める展開、コテコテの展開のオンパレード。
これをホラー映画、アクション映画として評価するなら、学芸会レベル。
ちょっと映画を聞きかじった素人が、つぎはぎして書いたような代物。
では何かメッセージがあるのかというと、それも汲み取れない。
何か言いたげだったが、説明不足で、全く伝わらない。
ただただ、出来の悪い筋書きの、消化不良の、キレの悪いションベンみたいな映画。
よくこんな脚本に資金を投じようと思ったものだ。
その証拠に、キャラクター、役者が、どれも魅力的でない。
印象にも残らない。
マイケル・ファスベンダーのための映画、と一部で言われているようだが、
そのファスベンダーの役どころだって、正直陳腐なものだった。
このパターンは、見飽きてると言っても過言ではない。
他のクルーは、言わずもがな、テンプレの「死に役」しかいない。
何がしたかったのか?
リドリー・スコット監督は、何かを言いたかったのかも知れないが、自分が言いたいことに没頭したあまり、登場人物を放ったらかしにしたようだ。
あるいは、完全にボケて、周囲が何も言えないだけかも知れない。
映像は、「さすがリドリー・スコット」と言いたいところだが、
最近は彼に負けないSF映画もあるので、正直「及第点」以上の何者でもない。
エイリアンが公開された同年、マッドマックスも公開された。
こちらは約40年の雌伏の時を経て、昨年「デスロード」として完全進化を遂げた。
ジョージ・ミラーに負けず、リドリーの「エイリアン」も完全進化を遂げるかと期待したが、本当に期待はずれに終わった。
無念である。
『新感染』83点 予想外にいいゾンビ映画!
【物語】★★★★★
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★☆
総合評価87点
ゾンビ映画好きとしては、「え? 韓国のゾンビ映画?」と最初は眉唾だったが、
海外でも評価が高いらしく、予告をやあらすじを見ても面白そうだったので、
あまり深く考えずに見ることにした。
川崎の映画館で最終上映の回、がら空きだろうという予想に反して9割席が埋まっていた。そういえば今日は1日、映画の日。
半額で見るなら、外してもいいか。
そんな気持ちで見始めたのだが、ごめんなさい、なめてました。
面白かったです。
厳密にいうとゾンビ映画ではない。「28日後」や「アイアムヒーロー」と同じ、人が感染し、凶暴化する類のパニック映画。
娘を離婚した母親に合わせるため、ソウルから釜山に向かう超特急に娘と父親が乗るところから物語が始まる。日本で言う所の新幹線。タイトル「新感染」のセンスのなさが残念だが、原タイトルは「釜山へ」。こっちの方がかっこいい。
そして、この超特急というシチュエーションが素晴らしい。
古くは「オリエント急行殺人事件」、最近だと「スノーピアサー」など、電車を面白く使った映画は、本当にハラハラするし、面白い。本作もその例外ではない。
高速で走る列車内は、ある意味で安全地帯であり、ある意味で閉ざされた密室である。その使い方が巧みで、冒頭からラストまで緊張感が途切れることがない。
そして、ストーリーが明快だ。
設定こそ斬新だが、あまり余計な寄り道をせず、リニアに最後までズバッとエンタメを貫く姿勢は評価したい。途中でダレることもなく、素直にその状況を楽しめる、否、怖がれる。
役者もなかなかいい。
残念ながら誰一人知らないのだが、それぞれいい味出してる。
特におっさんたち。
これは、役者もさることながら、脚本がいいんだろう。全員の立ち位置というか、キャラ設定が明快で、途中で「なんでそんなことするんだ?」と首をひねることが少ない。
この手の映画には、主人公を危機に晒すために、足を引っ張ったり、反社会的判断をするキャラが不可欠なのだが、そこを上手くやらないとストレスが溜まる。この映画では、あまりストレスがたまらなかった。
映像も迫力がある。
相当お金と人員を動員したのではないか、列車や駅をうまく使い、スケールの大きな絵になっている。ハリウッドにも負けていない。
観る前は、「韓国映画ってグロいだけかも?」という偏見もあったのだが、そのあたり、絶妙に「汚くない」仕上がりになっている。血は出るし、怖いんだが、汚くない。「アイアムアヒーロー」の方がむしろ汚かったなあ・・・
ゾンビ映画を真面目に、かつ、創意工夫を凝らして作った良作である。
見てよかった。
『ハクソー・リッジ』50点
【物語】★★★☆☆
【演出】★★☆☆☆
【演技】★★★☆☆
総合評価:50点
う〜ん、これでアカデミー作品賞ノミネートかあ。
正直納得いかない。
話がつまらないわけではない。
宗教上の理由により人を殺めることができないアメリカ兵が、
衛生兵として死地に赴き、仲間を助ける。
舞台は沖縄戦だから、日本はボコボコにされるわけだが、
それを差し引いても、まあ、そこそこ楽しめる映画。
一部には「舞台が沖縄であることをなぜもっと宣伝しなかったのか」みたいな批評もあるが、それは的外れというもの。
だって、製作陣にとっては、沖縄だろうがラバウルだろうが、どうでもいい。
たまたま史実で沖縄だっただけで、それほど思い入れはないのだ。
話は、まあ、いい。
演出、特にハクソー・リッジの戦いの演出が、イマイチだった。
まず、これはあまり期待していなかったからダメージも少ないが、
日本兵の描き方が雑。
ゾンビか、テラフォーマーか、チンピラにしか見えない。
当時の米兵から見たら、日本兵がそんな風に見えていたのかもしれないが、
『硫黄島からの手紙』とかは、もう少し丁寧に描いていたし、
やれないわけじゃないと思う。
あと主人公も、手榴弾をカンフーキックで打ち返すし・・・
とてもじゃないが「『プライベートライアン』に匹敵する戦闘シーン」なんて、
あんな宣伝文句は使うべきではない。
役者は頑張ってたと思う。
ただ後半、誰が死んで、誰が生き残って、誰が負傷してるのか、よくわからなくなる。
まあ、戦場というものは、そういうカオスなのだろうけどさ。
『フューリー』もそうだったけど、『プライベートライアンを越える』と宣伝文句で謳って、超えたものはない。というか、自信がないから、そういう宣伝文句を使うのか。
やはりスピルバーグは天才なんだな。
『バイオハザード ザ・ファイナル』36点
【物語】★★☆☆☆
【演技】★★☆☆☆
【映像】★★☆☆☆
総合評価:36点
まあ、所詮は「バイオハザード」なので大して期待せずに、
ハードルを下げて鑑賞したのだが、そのハードルをさらに下回っていた。
「観なくてもいい映画」の誕生である。
あらすじは、あるようで無きに等しいのがこのシリーズのお約束。
アリスとアンブレラ社+ゾンビがバトる。
それ以外は全て、つじつま合わせである。
「最後を見届けよ」という本作のキャッチコピーであるが、
その最後も、全然、本当に対したことがない。
最後かどうかも怪しい。
いいのよ、このシリーズに物語は(笑)
そんなものは1作目からなかったんだから。
このシリーズの生命線は、ホラーテイストのアクションとCG。それが全て。
前作までもそうだったし、それが許されるシリーズだった。
だがしかし。
本作ではそのアクションとCGも、なんだか期待はずれ。
目新しい見所はないし、過去の焼き直し的な映像のオンパレード。
そして決定的な問題が「暗いシーン」の多さ。
何か戦闘をしているようなのだが、暗くてわからない。
『AVP2』と同じくらい、暗くて、よくわからないシーンが多い。
これは絶対にライティングミス。
もしくは、低予算だからあえて照明を落として、
セットのチープさをごまかしているか。
おそらく、スポンサーがそれほどつかなかったのだろう。
だから「バイオハザードシリーズの金看板はついているが、しょぼい。
それでもなんとか稼がなければいけない。
特に、本家とも言える日本で稼がねば。
どうする?
ということでローラがキャステイングされたのではないかと
ブログ主は妄想する(笑)
いずれにせよ、見るべきところのない映画であった。
その前日に見た『キングオブエジプト』もひどかったが、
こっちはまだ、おっぱいがたくさん見れた(着衣)
『バイオハザード ザ・ファイナル』は、本当に何もない。
「なんとなく見れる」レベルになっているのは、ある意味大したもんだが、
見逃しても全く損はない。
『ローグ・ワン』84点
【物語】★★★★☆
【演技】★★★★☆
【映像】★★★★☆
《総合評価》84点
正直「微妙かもなあ」と思って観にいったのだが、
個人的には「エピソード7 フォースの覚醒」より面白かった。
もう少し褒めると、歴代SW作品の中でも上位に入る面白さだった。
「そんなバカな」と思われるかもしれないが、そう考える理由は、後で3つ説明する。
まず最初に断っておくと、この作品は下駄を履いている。
言うまでもなく、これまでのSW作品が作り上げた世界観があっての、スピンオフ作品なのだから、その財産の上に成立する映画だ。
だから「物語」にしても「映像」にしても最初から有利なスタートラインに立っている。
でも、うまく作らないと、単なる便乗作品となるだろう。
本作は、そうなっていない。
うまく、財産を生かしつつ、オリジナリティも出し、
単品で優れた娯楽作品になっている。
物語は、SW1作目(エピソード4)の冒頭につながる有名なエピソードが下敷きになっている。
レイア姫が手にし、R2D2に託し、ルーク・スカイウオーカーが手にする「デススター」の設計図。SW1作目で大きな役割を果たしたこの設計図をめぐるストーリーだ。
この設計図を、「ローグ・ワン」と言う愚連隊が入手するために死闘を繰り広げるのだが、デススターの脅威を観客の多く(全員?)が知っているだけに、この展開見ていて盛り上がる。
なお、このローグ・ワンは、正規軍ではなく、いわば、はぐれものの集団。それが、各々の使命感、覚悟から、帝国に挑む様は、ワクワクしてしまう。
映像は、いつものSWクオリティだから見ていて安心である。
白兵戦、宇宙艦隊戦、どれも迫力満点だ。
出番は少ないが、ダース・ベイダーの存在感、無双感もえげつない。
ある意味、「脂の載った」ベイダー卿の強さは、心胆寒からしめる。
演技は、少し甘めにつけて星4つ。
フォレスト・ウィテカーとドニー・イエン以外は割と地味な配役(いや、この2人もそこそこ渋い存在)だが、皆、うまく「無名の戦士」を演じている。
変に浮いた登場人物がいないのは、演出や脚本のおかげであるが、
役者の演技力も、それに貢献しているだろう。
最後に、本作が本家本流の「エピソード7」より優れていると思った理由を3つ述べる。
その1。
SWという財産の使い方がうまかった。
安易に有名キャラクターを登場させたりしなかったのが潔よい。
世界観は使い倒しつつ、ストーリーのオリジナリティを毀損していない。
「エピソード7」は、それが「売り」とは言え、昔の有名人を総登場させ、それでポイントを稼いだ感じがある。
オールドフアンとしては、確かに嬉しいのだが、やや安易さは否めない。
その2。
「その1」と少し関係するが、ストリートして「続編」が想定されていない。
1つの映画作品として「ローグワン」は完結しているのだ。
これは個人的には評価できる。
「エピソード7」は、確かに楽しめる映画だが、「あと2作続くよ」という前提があるので、映画単体として評価しづらいのだ。面白いのかそうでないのかは、あと2作見てみないとなんとも言えない。
その点「ローグワン」は、これ1作で「終わらせている」。
映画としての魅力が成立しているのは、こちらに軍配があがる。
その3。
変に、商品化を狙ったキャラクターがいなかったのが、好ましかった。
これは、必ずしも「だめ」というわけではないが、例えば「エピソード1」のジャージャーフィンクスや、「エピソード7」のBB8は、ある程度商品化を想定したものではないかと勘ぐってしまう。そういうことに気づくと、ブログ主は、萎えるのだ。
その点、「ローグワン」のキャラクターは、総じて「華がない」。
そこが素敵。
色々な人のレビューを見ていると、前半がだるい、などの意見も聞かれる。
思い返してみると「そうかも」と思わないでもないが、
ブログ主はめちゃめちゃ楽しめたので、何がともわれ、一度見て欲しい。
『シークレット・オブ・モンスター』49点
【物語】★★☆☆☆
【映像】★★★☆☆
【演技】★★★☆☆
《総合評価》49点
あれ? そうなの?
と、悪い意味で予想を裏切られた映画。
予告編を見て少し期待していたのだが、
見事に裏切られた。
予告編では「この謎が解けるか」とか「衝撃云々」と言われている。
だがしかし。
衝撃云々はともかく、謎は、一切ない(と思う)。
ただのサイコパス少年の乱行を、ただただ目撃する映画。
いまいち、楽しみ方がわからない。
ストーリーは、第一次世界大戦後のフランスが舞台。
アメリカのエリート外交官と、ドイツ系秀才母の間に生まれた少年が主人公。
不安定な欧州の雰囲気は、映画でいい味出している。
日本人にはよくわからないが、あの頃、英米が欧州を政治的に作り直していたんだなあ、と感慨深く見た。
で、そんなややこしい世界観の元で働く両親に、やや放任気味で育てられた少年が、発育の過程で異常な行動を示すようになる。
天才の一面と、粗暴で異常な一面を見せ始めるのだ。
ここから「どうやって独裁者に至るのだろう」と言うところが見せ所だと思うのだが、そこがいまいちつまらない。
単なる情緒不安定の引きこもりみたいで、見ていて苦痛である。
「なるほど、これが独裁者になるきっかけか」みたいなものが、見当たらない。
で、ラスト5分くらいで急に独裁者になってる。
なんじゃそりゃw
前衛映画なのかこれは。
もう少しストーリーで楽しませてほしい。
未来の独裁者ものなら、例えばヒトラーのクローンを扱った『ブラジルから来た少年』を見習ってほしい。
本作では、クローンのヒトラー少年が登場するが、彼はとても心優しく、正義感溢れる少年として登場する。それを見て観客は「ああ、やはり環境が人を悪に染めるのであって、生まれつき悪の人間はいないんだ」と安堵する。しかしラストで、少年は主人公を助けるために、悪人に犬をけしかける。その時の少年が見せた愉悦に浸った表情を見て、映画の観客は愕然とするわけだ。「あ、この子はやばいかもしれない!」と。
そうしたストーリーを期待したのは、期待しすぎと言うものだろうか。
映像は、綺麗だった。
第一次大戦終了後と言う特殊な状況を、美しくカメラが捉えている。
ただ、そんな映像も、情緒不安定の引きこもりの話に使われると、いまいち生きてこない。
また、不用意に長いカットがあるのも気になった。じっくりと長回しで見せるのも演出のテクニックだが、断言しよう、この監督とカメラマンは、その力量がない。ただ無駄に長ったるいカットにすぎない。
演技は、主人公の子役は頑張っていたと思う。不気味だし、狂気を孕んでいる。
でも、「衝撃」と言うほどではないなあ。
あと、大人たちも、いまいち。
家政婦のおばさんはちょっとよかった。
久々のミニシアター系映画だったので、少し色々じっくりと考えて、楽しもうと思ったのだけど、残念な作品であった。
『シン・ゴジラ』87点
【物語】★★★★☆
【演技】★★★☆☆
【映像】★★★★☆
《総合評価》85点
ブログ主はゴジラ映画が大好きである。
平成ゴジラも含め、ハリウッド版(マグロをたべるやつを含む)も、ほぼすべて観た。
伊福部昭のサントラも買った。
それくらい好きなのであるが、『メカゴジラの逆襲』以降、つまり、平成ゴジラシリーズ、ハリウッド版ゴジラ2作は、とても面白かったかといえば、やや微妙なものもあった。昨年公開されたギャレット・エドワース版『ゴジラ』はかなり良い方だったが、他は、「フアンだから楽しめる」「でも、ちょっと苦笑い」的な作品が多かった。
本作も、観る前は期待よりも不安の方が大きかった。
『進撃の巨人』や『テラフォーマー』になってるのではないだろうか。
『スペースバトルシップ ヤマト』や『デビルマン』を超えてしまうのではないか。
そんな不安もありながら、「いや、庵野だから大丈夫」と自分を鼓舞し、「いや、出渕の実写もひどいから庵野も心配だ」、といった日々を過ごした。
いずれにせよ、公開したら劇場鑑賞することは決めていた。
ブログ主は、ゴジラとロメロとジョン・カーペンターは、どんなに前評判が悪かろうが観に行くと決めているのだ。どんなに駄作でも、死ぬまでささやかなパトロンとして応援し続ける覚悟である。
で、事前情報もほとんどなしに観にいったわけだが、
一言で言うと、すっっっっっっっごく面白かった。
ああ、よかった。
贔屓目なく、ゴジラワールドに没頭できた。
ただし断っておくと、小学生の子供や、アクション映画には興味があるけど怪獣映画には興味がない女性などにとっては、やや評価が低いかもしれない。
幼少期に特撮映画やロボット映画が好きで、大人になった少年が狂喜乱舞できる作品。
「これが日本映画の限界だよね」とか「予算も少ないしハリウッドには勝てないよね」とか、そういう言い訳が頭をよぎらずに楽しめる映画。
それが、本作である。
ネタバレになるから物語についてはそれほど触れないが、基本的に初代ゴジラの話をなぞっている。つまり、シンプルだ。
初代ゴジラの公開はブログ主が生まれる前のことだから、リアルタイムでは鑑賞していない。ただ、リバイバル上映があったので、劇場に観にいった。
そのとき「おそらく当時、この映画は怖い映画だったんだろうなあ」ということだ。ただし、高校生の私が20年以上前に作られた白黒映画を見て、実際にはそれほど怖いとは思わなかった。
だが『シン・ゴジラ』は、怖かった。東京の街を、巨大な暴力が襲う。
初代ゴジラをリアルタイムで観た人も、こんな怖さを感じたんだろう、と思った。
物語は単純だが、登場人物やそのセリフ、字幕は、ものすごい量になっている。
子供にはおそらく、咀嚼しきれないくらいだ。
しかし、そこはさすが庵野氏の脚本、心地よいスピード感でサクサク進む。
よく考えてみればゴジラが出てくるアクションシーンは1時間以下なのだが、残りの1時間、一切ダレることがない。これは、脚本と編集の勝利だろう。
演技も、竹内豊はじめ、みんな頑張ってる。
「こいつの演技はすごい」というものはないが、庵野脚本をきちんと演じきっている。
そのため、みんなかっこいい。
ただし石原さとみをのぞく(笑)。
映像は、よかった。
ハリウッドのバリバリCG映画と比較すれば、確かに、幾分見劣りする。
だが、映像に味があるのだ
なぜなら、特撮映画だから。
トランスフォーマーのCGなど、どんなにすごいことが起こってももはや何の感慨もないが、シン・ゴジラの映像は、いいのだ。
何がいいのか、というのを口で言い表すのは難しいが、庵野という作家が、魂を削って、作品に命を吹き込んでいるのがよくわかる。それが、堪能できるのだ。
また、それを実写映画としてまとめている樋口監督も、褒めるべきであろう。
やや「戦隊アクション映画」っぽい、、つまり子供っぽい場面もあるのだが、総じて、大変クオリティの高い怪獣映画を撮っている。
ちなみに、ゴジラにはとんでもない必殺技が用意されている。
予想の範囲を超える、しかし、「う〜む、そうきたか」と半ば納得する必殺技だ。
これについても賛否両論があると思うが、ブログ主は「アリ」だと思う。
なにより、インパクトが凄まじかった。
冒険するときは、中途半端より、思い切ってやり切る方がいい。
この映画が海外で評価されるかどうかは知らない。
だが、もうそんなことはどうでもいいのではないか。
そんなことはありえないだろう、と思っていた映画である。
最後に少しだけ、減点についても触れておこう。
先にも述べたように、子供や女性を置いてきぼりにしたところはあるので、
万人にうけない、ということで減点した。
ただ、一個人としては、この割り切りは大変ありがたいことである。
またゴジラの倒し方で、やや滑稽に見えるようなところがあった。
これは、ブログ主の心の中でも賛否両論なのだが、あえて「減」とした。
最後に、やはり石原さとみである。
『進撃の巨人』のときにも思ったが、調子のってるな〜(笑)
本人はノリノリなのだが、観ていて、ちょっと引く。
キャスティングにあたり、大人の事情もあったのだろう。
スポンサーの事情もあったのかもしれない。
しかし、さすが庵野である。
あれだけ目立つ役割を与えながら、おいしいところは全部市川実日子に持って行かせてる(ブログ主の感想です)
石原さとみがバンバン登場するのに、むしろ市川実日子が地味〜に男心を奪っていくのだ。
この手法はきっと、アスカを目立たせながら、実は綾波やミサトさんで得点を荒稼ぎしたエヴァのの手法と同じなのだろう。